高気密・高断熱住宅とは②
こんにちは。スタッフの岡部です。
前回までのあらすじ → 時代と共に、家に求められることが変わってきたよ!
通気優先の考え方から、断熱へ。
燃料を大量に使用しなくても、冬の寒さをしのげる家にするにはどうしたら?
昭和の時代、人々は考えました。
そしてひらめきます。壁の中に断熱材をたくさん詰めたら良いのだと。
するとどうでしょう。
新築間もない家の床が腐り落ち、大量のキノコが生えました。(※ナミダタケ事件)
当時は気密・防湿といった考えは重要視されておらず、その結果、室内から壁の中に大量の水蒸気(湿気)が侵入。
その水蒸気が結露となり、断熱材のグラスウールに吸収されて木材を濡らし、そして腐朽が進んでしまいました。
住宅にとって厄介な水蒸気、彼らはどこにでも存在します。
料理をしても、石油ストーブを焚いても、人間の呼吸からも出ます。
そして彼らはとても小さく、どこにでも行けます。
そう、壁の中を通り抜けることも…。
時代は変われど、木造住宅にとって水分が大敵であることに変わりはありません。
しかし、昔のような年がら年中風が吹き抜ける家にはもう戻れない。
しかしこのままでは結露が…!キノコが…!
人々と水蒸気との戦いが始まりました。
まずは水蒸気の持つ性質の説明から。
水蒸気は、湿度の高いところから低いところへ移動しようとします。
そして、暖かい空気の方が冷たい空気よりも多く水蒸気を含むことができます。
少しわかりづらいので、擬人化してみます。
あるところに、暖かい空気と冷たい空気がいました。
暖かい空気はいつも優しく朗らかで、水蒸気たちに大人気!
それに対して、冷たい空気は器が小さく、あまり人気がありません。
しかし、優しさにあふれた暖かい空気は、そんな冷たい空気のことを見逃しません。
暖かい空気は冷たい空気にこう言います。
「僕の周りには水蒸気たちがたくさんいるから、君にもあげるよ!」と。
暖かい空気から冷たい空気へと、水蒸気たちは移動を始めます。
こちらの都合もお構いなしに、どんどん押し寄せる水蒸気たち。
器の小さい冷たい空気は、そんな水蒸気たちを受け止めきれず、追い払ってしまいます。
そう、このとき追い払われた水蒸気たち、それが結露です。
ということで、
・冬は外が寒い(水蒸気:少)/ 室内が暖かい(水蒸気:多)→ 水蒸気は室内から壁の中を通り、外へ移動しようとします。
・夏は外が暑い(水蒸気:多)/ 室内が涼しい(水蒸気:少)→ 水蒸気は外から壁の中を通り、室内へ移動しようとします。
なぜ冬に窓が結露するのかというと、窓ガラス付近は断熱性能が低く外気の影響を受けやすいため、冷気が溜まっています。
すると、水蒸気をたくさん含んだ室内の暖かい空気は、水蒸気が少なく冷たい空気をまとった窓(外)に向かって移動を始めます。
しかし、冷たい空気は水蒸気を多く含めない。冷たい空気が受け止めきれなかった水蒸気が水滴(結露)になって出現、ということです。
これと同じことが壁の中で発生したのが、内部結露です。
ちなみにこの現象は夏でも起こります。(夏型結露)
冷房の効いた涼しい室内に向かって、大量の水蒸気を含んだ暖かい空気がやってくるのです。
壁の中で結露が起きる原因は判明しました。
では、その対策をどうするか。
…そもそもこの水蒸気を壁の中に入れないようにすれば良いのでは、という結論に至ります。
断熱材の表面に防湿・気密性のあるシートを隙間なく張り付け、室内からの水蒸気が壁の中に侵入するのをブロック!
建物の隙間もきっちり埋めることで、予期せず壁の中に侵入する水蒸気もブロック!
人々と水蒸気との戦いに終止符が打たれた瞬間でした。
気密性が高まることで、空気のコントロールがしやすくなります。
前回の記事でご説明した、機械を利用しての換気が計画通りに行われることで、室内の空気環境が良好に保たれ、カビや結露の発生も防ぐことができます。
断熱材の効果もきちんと発揮され、冷暖房の効率も向上。
気密性能は、住宅の快適さ=人の住みやすさに直結することなのです。
そんな大切な気密性能。
C値が低いのが良いのはわかったけれど、じゃあ実際どうやって計算するの?ってことですが、実際の工事現場で断熱・気密の施工が完了した段階で、ラッパのような形の気密測定機を使って検査します。
その結果でそこまでの施工精度の良し悪しがある程度出てしまうので、住宅会社側からするとプレッシャーのかかる検査でもあります。
しかし、仮に想定していた数値よりも悪い結果が出たとしても、どこかに見落としている隙間があるということなので、満足いく結果となるまで、その原因を調査 → 発見 → 気密処理 → 気密測定。を繰り返します。
しかし、その気密測定は義務ではありません。
以前は国が定めるC値の基準があったのですが、先ほどお伝えしたように現場での測定が必要なため、現場にも役所にも手間とコストがかかることなどを理由に廃止されました。
ですので、現在C値について気密測定を行うか否かは住宅会社側の判断となっています。
※ただし、以前定められていた国の基準値は5㎠/㎡なので、あまり意味をなさない基準値でした。
断熱性能については、使用する断熱材や窓の性能、厚さ・大きさなどから設計時に計算をすることが可能です。
2025年4月からの法改正で一定の断熱性能(断熱等級4以上)を上回ることが義務化されたため、どこの住宅会社に依頼したとしても一定の基準はクリアされています。
住宅会社選びを迷っているお客様にとって、その点についてはある程度の安心感は得られるかと思います。
しかし、これまでお話してきたように、高断熱と高気密はセットでなければ意味がない!
どんなに高性能な断熱材を使用したとしても、しっかり気密がとられていなければその性能を発揮することはありません。
前回の記事で、当社では気密性能と断熱性能の基準値を設定していないと申し上げました。
その理由として、
・気密性能については、実際に検査してみるまではわからないため。
・断熱性能については、使用する断熱材や窓の製品性能による部分が大きく、どこの住宅会社で施工しても大差はないため。
以上の理由から、基準を設けてもあまり意味がないな…と考え設定しておりません。
しかし、気密性能については当社では全棟気密検査を実施しております。
まだ設立間もない会社のため、過去の実績としては独立以前のものにはなってしまいますが、おおよそ0.5㎠/㎡以下となっております。
断熱性能については、使用する製品の性能と共に費用も変わってきますので、ご希望される断熱性能とご予算のバランスによって最適なご提案をさせていだだきます。
なんだか気密のことばかり触れて、断熱についてはあまり触れられていないような気もしますが…。
ひとまずざっくりとではありますが、気密・断熱性能についてご説明させていただきました。
長くなってしまいましたが、ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。
ではまた次回!